痰に血が混じっている…!緊急性の高い症状
痰に血液が混じっていること、あるいはその痰自体を「血痰」と言います。
早めの医療機関の受診が必要ですが、特に以下に該当する場合には、救急車を呼んでください。
- 血痰が大量に出て止まらない
- 血痰とともに、胸痛、息苦しさなどの症状がある
※救急車を呼ぶべきかどうか迷ったときには、救急安心センター事業「#7119」をご利用ください。トレーニングを受けた相談員が、症状・状況を確認し、適切なアドバイスをしてくれます。
血痰(けったん)と喀血(かっけつ)の違い
痰に一部血液が混じっているものを「血痰」、ほとんどが血液で占められているようなものを「喀血」と言います。
いずれの場合も、口腔、鼻の中、喉、気管支、肺、食道・胃からの出血のサインです。ですので、血痰だから大丈夫ということはありません。
痰に血が混ざっているとき考えられる疾患
肺結核
結核菌が肺や気管支に感染することで起こる病気です。結核菌が肺胞領域まで到達・増殖し、そのうち10~23%において、肺結核を発症します。糖尿病、がん、低栄養の方、免疫抑制剤・副腎皮質ステロイド・生物学的製剤を使用している方、胃切除後の方、HIV感染している方など、免疫力の低下した方に発病しやすいと言われています。症状としては2週間以上続く慢性の咳、体重減少、倦怠感、血痰や喀血などが挙げられますが、これらの症状が乏しく発見・治療が遅れるケースも珍しくありません。
非結核性抗酸菌症
抗酸菌のうち結核菌以外の抗酸菌への感染によって引き起こされる病気を「非結核性抗酸菌症」と呼び、その90%以上をMAC菌感染による肺MAC症が占めます。MAC菌を含めた非結核性抗酸菌は、結核菌とは異なり、ヒトからヒトへと感染することはありません。自然界の水回りや土壌、ほこり、水道・貯水槽などから誰でも吸引しており、数年から10年以上をかけて徐々に進行します。基本的に予後は良好ですが、慢性の咳、血痰、呼吸不全などを起こすこともあります。
気管支拡張症
気道の壁が何らかの影響で拡張し、元に戻らない病気です。
先天性(生まれつき気管支が拡張)のものと、重度の呼吸器感染症(肺結核や細菌性肺炎など)や慢性的な呼吸器感染症(非結核性抗酸菌症など)、関節リウマチやシェーグレン症候群などの膠原病、真菌に対するアレルギー反応(アレルギー性肺アスペルギルス症:ABPA)などにより起こる後天性のものがあります。拡張した気管支には、緑膿菌などの細菌が感染しやすく、咳や痰(血痰)、発熱、倦怠感、呼吸困難、体重減少などの症状が見られる事があります。
肺炎
細菌やウイルス、カビなどにより肺が炎症を起こし、咳、痰、ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音(喘鳴)、息切れ、発熱などの症状が見られます。体力・免疫力が低下したときなどには特に発症リスクの高くなる病気です。重症な肺炎になった場合には血痰が出現することもあります。
肺がん
肺および気管支の細胞から発生する癌(悪性腫瘍)を「原発性肺癌」と呼び、これに対し大腸癌など他の体の部位から肺に転移した癌を「転移性肺癌」と呼びます。悪性腫瘍は良性腫瘍とは違い、正常な組織に浸潤し、破壊しながら増殖・転移するものをいいます。一言で肺癌と言っても、肺腺癌・小細胞肺癌・肺扁平上皮癌・大細胞癌など多くの種類の肺癌が存在します。また診断時点で早期のものから末期のものがあり、それぞれ全身への影響や治療方針が異なります。しかしながら特徴的な症状はなく、咳、痰、血痰、発熱、息苦しさなど呼吸器症状としてありふれたが多く、転移するまで無症状である事もあります。
肺塞栓(エコノミークラス症候群)
肺の動脈に血液のかたまり(血栓)が詰まる病気です。足の静脈にできた血栓(深部静脈血栓症)により起こる事が多く、長時間座ったままでいたり、同じ姿勢を取り続けると血流が悪くなり血栓ができやすくなります。
動いたときの息苦しさから始まり、胸痛、胸の不快感・圧迫感、血痰、下肢のむくみなどの症状が出現し、呼吸困難に陥ることもあります。
その他に考えられる原因
- 急性扁桃炎・咽喉頭炎
- 喉頭がん・咽頭がん
- 声帯麻痺
- 扁桃周囲膿瘍
- 鼻出血症
- 副鼻腔炎
- ストレス
痰に血が混じっているとき行う検査
少量の出血の場合
聴診、血液検査、胸部X線検査、胸部CT検査などを行います。
血液検査では、貧血や炎症の有無、(輸血に備え)血液型などを調べます。
肺炎・肺結核が疑われる場合
痰の中から肺炎の原因菌、結核菌などを調べる喀痰培養検査を行います。
肺がんが疑われる場合
痰の中からがん細胞を調べる喀痰細胞診検査、胸部CT検査を行います。
また、気管支鏡検査のよる組織採取・病理検査が必要となります。
原因不明の場合
気管支鏡検査により出血部位と出血の原因を調べます。