息切れとは
安静にしているとき、私たちは特に意識しなくても自然に呼吸をしています。息切れとは、この呼吸をする際に努力が必要な状態や、不快感(息苦しさ)を感じる状態を指します。
全速力で走ったときなどには息切れを起こすのが当たり前ですが、ちょっとした運動(早足、駅の階段の上り下り等)で息切れする場合には、何らかの異常が生じている可能性があります。
息切れの症状チェック
激しい運動をしたときだけに息切れが生じるのであれば問題はありません。
ただし、以下のような息切れがある場合には、一度当院にご相談ください。下のチェック項目ほど、重度の息切れとなります。
- 早足、緩やかな上り坂での息切れ
- 駅の階段の上り下りでの息切れ
- 同年代の人と歩いていて自分だけが息切れする、ついていけない
- 平坦な道を100メートル歩くと息切れする
- 平坦な道を数分歩くと息切れする
- 息切れがひどく外出できない
- 服を着替えるだけで息切れする
息切れから考えられる呼吸器疾患
気管支喘息
気道に慢性的な炎症が生じ、様々な刺激に気道が敏感になり発作的に気道が狭くなるのを繰り返す病気です。
埃、タバコの煙、ストレス、ペットの毛など、さまざまなものが原因となります。小児喘息は、特定のアレルギー物質に反応して生じる「アトピー型喘息」がほとんどですが、成人喘息はアレルゲンが特定できない「非アトピー型喘息」がほとんどを占めます。夜間から明け方にかけて症状が悪化しやすく、鎮痛剤の使用(アスピリン喘息)や運動の後(運動誘発性喘息)に発作が出現する事もあります。発作時には「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった呼吸音(喘鳴)とともに、息切れが生じることがあります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
タバコの煙を主とする有害物質を長期にわたって吸入することで肺に炎症が生じ、肺気腫や慢性気管支炎を伴った病気の総称が「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」です。慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の約9割が喫煙者と言われており、喫煙を始めた年齢、喫煙本数、喫煙年数などの喫煙量に比例して発症リスクが高くなります。
咳、痰、身体を動かしたときの息切れ(労作時呼吸困難)が主な症状として挙げられます。息切れは誰でも激しい運動したときに起こる反応ですが、階段を昇ったり、少し早足で歩いた程度で息切れが生じるときには注意が必要です。
間質性肺炎
肺が炎症などで肺胞壁が厚く(線維化)なることで硬くなり、空気を吸っても十分に肺が膨らみにくくなる病気です。また、厚くなった肺胞壁が、酸素を取り込んで二酸化炭素を出すといった正常のガス交換を妨げるため、息切れや咳などの症状が見られます。関節リウマチや皮膚筋炎などの膠原病や、病院で処方される薬や漢方薬・サプリメントなどの健康食品、職業や生活上でのホコリや石綿、ペットの毛やカビなどの慢性的な吸入、特殊な感染症などが知られています。
しかし半数以上の症例が、原因を特定できない特発性間質性肺炎であり、その中の特発性肺線維症(指定難病)は、50歳以上の喫煙習慣のある男性に多いことが知られております。
肺がん
肺および気管支の細胞から発生する癌(悪性腫瘍)を「原発性肺癌」と呼び、これに対し大腸癌など他の体の部位から肺に転移した癌を「転移性肺癌」と呼びます。悪性腫瘍は良性腫瘍とは違い、正常な組織に浸潤し、破壊しながら増殖・転移するものをいいます。一言で肺癌と言っても、肺腺癌・小細胞肺癌・肺扁平上皮癌・大細胞癌など多くの種類の肺癌が存在します。また診断時点で早期のものから末期のものがあり、それぞれ全身への影響や治療方針が異なります。肺癌の進行や胸水貯留などにより生じる息切れが原因で発見されることもあります。
息切れを起こすその他の疾患
心臓
- 心不全(心筋梗塞、心房細動などの不整脈、心臓弁膜症など)
- 肺高血圧症
血液
- 貧血
内分泌
- 甲状腺機能亢進症
神経、筋肉
- 筋萎縮性側索硬化症
- 進行性筋ジストロフィーなど
精神
- 心身症
- 過換気症候群
息切れの改善・対処方法
息切れが生じたまま無理をして運動を継続すると、症状が悪化します。
まずは運動をやめ、以下の方法を試してみてください。
ただし、症状が落ち着いても、放置せずにできるだけ早く当院にご相談ください。
座る場所がある時
椅子に座って、テーブルに肘をついてやや前かがみの姿勢をとり、呼吸を整えます。テーブルがなければ、膝に手をついて上半身を支え、同様にやや前かがみの姿勢をとってください。
座る場所がない時
以下のいずれかの姿勢をとり、呼吸を整えます。
- 壁に手をつき、身体を支える姿勢
- 壁に腰を軽く押し付けるように当て、膝に手をついて上半身を支える姿勢
- 胸の高さくらいのテーブル・台があればそこに腕を乗せ、地面を見るような前かがみの姿勢
呼吸を楽にする呼吸法
以下のいずれかの姿勢をとり、呼吸を整えます。
口すぼめ呼吸
鼻から息を吸い、口をすぼめて吐き出します。吐き出すときは、吸うときの2倍の時間をかけます。
腹式呼吸
息を吸ったときにお腹が膨らみ、吐いたときにお腹がへこむ呼吸法です。いざというときに慌てないよう、普段から練習しておきましょう。
息切れの症状がある場合に行う検査
息切れの症状がある場合には、主に以下のような検査を行います。
胸部X線検査
肺炎や肺がん、心不全、気胸、ある程度進行した慢性閉塞性肺疾患(COPD)などを発見することができます。
胸部CT検査
肺がん、肺結核、気管支拡張症、気胸、胸部大動脈瘤、肺動静脈瘻、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心臓疾患などの病気を発見することができます。
胸部X線検査と比べ、より早期での発見が可能です。
呼吸機能検査
(スパイロメトリー)
慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息、間質性肺炎の評価として有用な検査です。
血液検査
炎症反応、BNP値、D-dimer、甲状腺ホルモンなどの測定に有効です。
通常、胸部X線検査やCT検査と組み合わせて実施します。